2015年08月21日

視察報告③「ナグマカパックのコミュニティー基金の使い方~コミュニティー・ビジネスの可能性~」

こんにちは。

フォレストーリー・プロジェクト事務局の南原です。

前回はマンガタレム市の2つのコミュニティーの森林再生の現状を報告しました。その中で住民たちが積極的に携わり、着実な森林再生が実現されている様子がうかがえたかと思います。その大きな要因である「コミュニティー基金」とその活用状況、成果、今後の課題等について今回は報告します。

カタラタラーンでのミーティング風景

皆様から頂いたフォレストーリー・プロジェクトの協賛金の内10%は、住民たちがコミュニティーの発展のために活用出来る「コミュニティー基金」として、提供されています。

基金の提供は直接行われるのではなく、一旦現地NGOハリボン協会にプールされ、ハリボン協会が定期的に実施する苗の活着率チェックの成果に応じた金額を、数回に分けてコミュニティーに提供しています。

ここでポイントとなるのが、活着率の目標値です。政府が主導する全国緑化計画(NGP)における目標活着率が50%である一方で、本プロジェクトの目標活着率は80%となっています。たとえ70%の活着率を実現できたとしても、それは目標の活着率を達成していないことになります。その場合は、提供されるコミュニティー基金の一部が減額となり、次回に持ち越されることになります。

活着率80%はかなりハードルの高い数値になっていますが、住民たちにとっては、各回基金を満額を受け取るために活着率80%を達成することが大きなモチベーションとなります。このような仕組みが、住民の積極的な参加を促し、結果として着実な森林再生を実現する要因となっています。

基金の用途は、大きく三つに分類されます。一つ目は、ミーティング用の食器の購入、ミーティング等で使用される集会場(Bunk House)の建設費などコミュニティーにとっての必需品の購入に充てられる場合。二つ目は、噴霧器・ナタなど、植林・メンテナンスに必要となる資材の購入に充てられる場合。そして最後は新たな収入源となり得るコミュニティー・ビジネスの資本金となる場合です。

以前のブログ記事「フォレストーリー視察報告その⑦コミュニティーメンバーとの意見交換」においても詳しく説明されていますが、ナグマカパックの住民からなる森林再生を担当する人民組織(PO)カタラタラーンは、コミュニティー基金を、特に三つ目の分類「コミュニティー・ビジネスの資本金」として積極的に活用してきました。今回の視察では、それらのコミュニティー・ビジネスが現在どのようになっているのかを確認しました。

カタラタラーン ビデオケカタラタラーン ウォーターサーバー
はじめにビデオケのレンタルビジネスについて。(フィリピンでは映像付きのカラオケ機器のことをビデオケと言います。)フィリピンでは冠婚葬祭のシーンでビデオケがよく使われるという習慣に基づき、上の写真のビデオケを購入し、近隣コミュニティーにレンタルを行うことで、POのメンバーは収入を得ていました。しかし現在は、近隣コミュニティー内に競合相手が現れたため、ほとんどレンタルを行っていないということでした。他方で写真のようなウォーターサーバーを購入し、現在は、地域でミーティングが行われる際に、このウォーターサーバーや食器などをメインにレンタルビジネスを行っています。

カタラタラーン コンポスト1
コンポスト2

次にコンポストについて。このコンポストでは、家畜の糞尿に稲わら等を投入し、ミミズで分解しています。こちらも以前は1400ペソ(20158月時点、日本円で約1,050円)、1か月に約50袋を販売しており、住民の貴重な収入源となっていました。しかし現在は、POのメンバー間でしか使われていない状態となっていました。住民によると、元々コンポストを買い求める人々がそれほど多くはなく、さらに政府が推進している全国緑化計画(NGP:National Greening Project)に全メンバーが従事しているため、コンポストの管理が出来ない状態になってしまっているためのようです(NGPに従事すると1本の苗を提供する毎に8ペソ、1haの年間メンテナンスで4,000ペソがもらえるようです)。

カタラタラーン Fishpond

次に養殖池について。この養殖池は、ティラピアという魚を養殖・販売するビジネスを行うためにコミュニティー基金を使って作られました。そして実際国から1万匹のティラピアの幼魚が供給され、一度はそれらを1kg70ペソ程度で販売することが出来たようです。しかし、その後雨季にナマズやドジョウが侵入し、稚魚を食べ尽くしてしまったため、現在はティラピアはほとんどいない状態となっていました。

以上のようにこれまで行われてきたコミュニティー・ビジネスの内、いくつかが一時的に中断されていたため、正直残念だったのですが、素晴らしい成果も垣間見ることが出来ました。住民たちは現在NGPに従事し、日当を受け取っています。その日当の一部(約30%)は、「コミュニティー基金」として自主的にPOにプールされているのです。つまり住民たちはコミュニティー基金の考え方や仕組みを他のプロジェクトにも活用することで、自分たちのために使える資金を確保しているということが分かりました。そして驚くべきことに、確保した資金を用いて下の写真のような中古車を購入したというのです。現在は、この車を活用して小・中・高生を村から学校まで送迎するビジネスを展開し、月々9,200ペソ(日本円で約25,000円)を得ています。この売上の一部は日当として担当したメンバーに提供され、残りはまたコミュニティー基金としてプールされ、新たな投資に活用されることとなります。

kataratara-nn

インタビューをしたカタラタラーンのメンバー達は、コミュニティー基金の成果として、基金を運用するすべを学んだことを挙げていました。一方で、今後の課題として、活着率とは別に、ある程度の日当がメンテナンスに従事する大きなインセンティブになりうること、自分たちの始めるビジネスの計画を慎重に検討することが挙げられました。

彼らによると、当初ビデオケのレンタルサービスやコンポスト、養殖池などのビジネスを発案した際は、「競合他社が現れること」「維持管理に労力が必要となること」などを全く検討していなかったと言います。彼らは今後もこれらのビジネスを再開することを目指しており、これまでの失敗の教訓を活かして、競合相手とどのように差別化を行うか、どんなリスクがあるのか、それに対してどのような対策をすべきか、などを考えたいと意欲を燃やしています。これらについては、事務局やハリボン協会でも、今後の改善策を検討していきます。

カタラタラーン ミーティング風景2

以上、ここまでマンガタレム市の植林状況やコミュニティー基金の活用状況について確認をして来ました。次回からは、ミンドロ島の現状を報告させて頂きます。

次回「ミンドロ島シティオ・パルボンの森林再生~自発的な森林保全の実施~」について。




フォレストーリー・プロジェクト公式ブログ